非嫡出子の法定相続分が嫡出子のそれと同じになったのは既にご存知のことかと思います。
しかし、この非嫡出子も「認知」を受けないと権利は発生しません。
この「認知」について少し確認しておきます。
「認知」を要するのは父に関してであって、母に関しては分娩の事実によって母子関係は生じるので「認知」は不要となります。
「認知」の方法は戸籍法に従った届出による方法と遺言による方法があります。
しかし、成年の子を認知する場合にはその子の承諾が必要であり、胎児を認知する場合にはその母親の承諾が必要となります。希かもしれませんが、死亡した子でも直系卑属があるときに限り、認知することができますが、この場合、その直系卑属が成年者であるときは、その者の承諾を必要とします。
そして、「認知」の効力は、第三者が既に取得した権利を害さない範囲で、出生の時に遡って生じます
相続において、「認知」を受けた子は嫡出子と同じ権利を取得するわけですから、場合によっては自ら「認知」を希望することもあるでしょう。
その場合は、自ら(又は、その直系卑属や法定代理人により)認知の訴えを提起することもできます。ただし、認知者となる者が死亡して3年を経過してしまうとできなくなります。
相続開始後の認知によって相続権を取得し、他の相続人に対して遺産分割請求を行った場合に、他の共同相続人が既に分割を終了していたり、遺産そのものを処分していたときには、価額のみによる支払いの請求権を有するに過ぎません。現物(例えば不動産)の分割請求はできないということになります。
平成25年の最高裁判決後、非嫡出子の相続分が嫡出子と同等になったことで、「相続分は2分の1だから」という苦しいまでもそれまではあった”妥協点”といえるようなものがなくなり、認知を受けた者と嫡出子との関係性がより複雑なものとなりました。
「認知」の方法として遺言による方法もあると先述しましたが、他の共同相続人に一切話さずに「遺言による認知」を行うとどうなるか、あまり想像したくない結果となるのではないかと思います。
「認知」を行う者も結果どうなるのかということを全体を俯瞰的に見る必要があります。
それでも尚且つ「認知」を行う決断をした場合には、特に相続人となる者に対して丁寧な説明を時間をかけて行わなければなりません。説明を受ける相続人も感情的にならないように気をつけながら対処していく必要があります。
「認知」を受ける者も、特に成年に達している場合には、権利の主張ばかりではなく、他の相続人の心情も考えなければならないでしょう。
相続開始後に強制認知(認知の訴え)によって、共同相続人の前に「認知」された相続人が突然現れることもあるかもしれません、大変難しい問題ではあります。
「認知」を受けた者、それに対処する相続人、どちらも、対処方法を間違えると問題が大きくなり、時間・費用・感情の面で多大な損害を受けることになるかもしれません。
難しい問題であるからこそ冷静な対応が求められます。